こんにちはネカフェ難民のシンイチです 何個か前の記事に引き続き、70年代末から80年代あたりに創刊された、SFまんが雑誌について見ていきたいと思います。
・リュウ
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「リュウ」は、アニメージュ増刊として79年より創刊。
雑誌名は石ノ森章太郎先生の「リュウ」三部作、「リュウの道」「原始少年リュウ」「番長惑星」が、由来とされています。
本誌の看板作品として、石ノ森章太郎先生の「幻魔大戦」、ガンダム作画監督・安彦良和先生にまんがを描いてもらった作品であり映画化もされた「アリオン」が連載されています。石ノ森や安彦を中心に 吾妻ひでお先生や「超人ロック」聖悠紀先生がまんがを描いている雑誌でした。ちなみにこの時の安彦先生の担当編集が大塚英志氏であり、その後大学の先生になった二人は、ゼミの部屋も隣になったらしく、安彦氏は自伝で大塚氏のことをボロクソに言っていますww。
閑話休題。同誌は82年あたりからニューウェーブやアニメ系、耽美色が強い作家が連載。同誌とはまた別に、徳間書店が少年漫画界に殴り込みをかけた雑誌「少年キャプテン」に 安彦先生(クルドの星)を初め大御所が移動し、誌面が大きく変割っていきます。85年より表紙が白倉由美先生の専属となったのは、大塚英志氏の人脈でしょうか?翌86年には休刊となります。
・DUO
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休刊した「マンガ少年」(朝日ソノラマ)の後継誌として創刊されたのが「DUO」です。
この雑誌は「マンガ少年」の少女版であり、当初は「男の子と女の子のためのニューエイジコミック」を謳っていたものの、徐々に完全なる女性向けのまんが雑誌になっていきました。
連載作品も、竹宮惠子先生、大島弓子先生の他、山田ミネコが「最終戦争シリーズ」を描くなどもう女性向けです。
さらに、創刊号から楳図かずお先生の「まことちゃん」スピンオフ?で、まことちゃんがが爺ちゃんになって、暴走族に入る「男神」も掲載されました。もはや最初からSFでもなんでもなかったのか(ニューエイジ出会ってSFではないのかもしれない)85年には休刊となります。
・ウィングス
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82年「パワーアップSFコミック」として、新書館から「ウィングス」が創刊。「超人ロック」の聖悠紀や、「赤い牙」の柴田昌弘などが看板作家だったようです。
新書館ってどこやと思って調べてみたところ、萩尾望都、竹宮惠子などの先生方も筆を握ったヴィジュアル系少女コミック誌「Grape Fruit」を出していた出版社でした。「Grape Fruit」が「コミックアンドアーツ」を謳っていることからも、同出版社はバレエやフィギュアスケート、女性向けコミック、人文書の3本柱の高尚な出版社なようです。
同誌も徐々にSFから少女漫画雑誌変貌。高河ゆん先生の代表作「アーシアン」「源氏」も同誌で連載されました。
・スーパーアクション
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83年には、SF・冒険・ファンタジーを3本柱に掲げた
「スーパーアクション」が創刊。「アクション」という名前からも漂っている通り、双葉社から出ています。
自由にやらせてもらえるお金もらえる雑誌、通称金の出るガロ系の雑誌であり(白泉社のコミコミ、マガジンハウスのパンチザウルスetc...)その中でも特にSFが強かった雑誌のようです。
掲載陣は、大友克洋(童夢や幻魔大戦のピンナップ)、吾妻ひでお、諸星大二郎、星野之宣、板橋しゅうほうなどのSF系の先生方の他、モンキー・パンチ、山上たつひこ、鴨川つばめ、蛭子能収、花輪和一、日野日出志、いしいひさいち、黒咲一人、西岸良平、谷岡ヤスジ、谷口ジロー、とり・みき、新田たつお、平野仁、藤子不二雄、藤原カムイ、寄生虫etc...
SF、ニューウェーブ、チャンピオン、ガロ、サブカル、ガチ巨匠...なんでもありのとんでもない雑誌。87年に休刊。孤軍奮闘の4年数ヶ月が幕を閉じました。
・コミックNORA
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アニメ雑誌御三家の一角「アニメディア」(学研)の増刊「SFアニメディア」(85年)が、改題創刊されたのが「コミックNORA」(86年)です。表紙からもわかる通り、安彦良和先生の映画化もされたまんが「ヴイナス戦記」を掲載した雑誌。
このNORAの他にも同誌の姉妹誌となる少女漫画誌「CAIN」や野球漫画だらけの「どっかんV」(77年)まいっチングマチコ先生を生み出した児童向け漫画誌「月刊少年チャレンジ」(79年)など、現在の学習漫画を出しているイメージとは異なり、当時はかなり積極的にまんが雑誌を出していた印象を受けます。
あと、NORAコミックなるコミックレーベルが同社から出ていのですが、どういうわけかそこから「機動戦士VS伝説巨人 逆襲のギガンティス」が出ています。96年、10年続くも休刊。
・そして、SFまんが雑誌ブームは終わりを告げ...
この80年代半ばという時期に多くのSFまんが雑誌は休刊していきました。メディアミックス路線の雑誌を除いていき唯一残った雑誌は、SFというより女性向け雑誌となった「ウィングス」。そもそも出版元が女性向けのコンテンツを得意とするため、そちらの気質に近づいていった、と言えます。
80年代も中頃あたりには、SFもブームといった形の熱はすっかり冷めていました。SFまんがは少年漫画の一ジャンルとして少年誌、青年誌の中へと取り込まれていくことになります。筒井康隆氏が述べた「浸透と拡散」とも言えるし、SFが市民権を得たとも言えます。吾妻ひでお、大友克洋らスターは、この辺りから事実上の休刊状態となっていくのでした。
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